【ルート・アイリッシュ】 ROUTE IRISH イギリス・フランス・ベルギー 他 2010
監督:ケン・ローチ 脚本:ポール・ラヴァーティ 出演:マーク・ウォーマック / アンドレア・ロウ / ジョン・ビショップ 他
"世界で最も危険な道路 (ルート)" と呼ばれるイラクの地で、兄弟同然の親友フランキーを亡くした男ファーガスが、その真相を暴こうと苦闘するドラマ。
監督はイギリス映画社会派の名匠ケン・ローチですね。
この作品でテーマに取り上げてるのが、イラク戦争におけるコントラクター (民間兵) の存在と、軍事ビジネスの暗部なんですよねぇ。
"アイリッシュ・ルート"と呼ばれるそのルートとは、イラクのバグダッド空港と市内の米軍管轄区域 〈グリーンゾーン〉 を結ぶ12キロに及ぶ道路の事なんですが、米軍によるイラク侵攻後、テロ攻撃の第一目的とされる 「世界一危険な道路」 として知られていたようなんです。
傭兵を集めて戦地へ送る、戦争請負会社とも呼べる民間軍事会社に所属し、イラクへと赴任する事になったファーガスは元軍人。 軍の汚い任務に嫌気がさした彼は傭兵として戦地に留まります。
後に親友フランキーを誘い、共にイラクで傭兵稼業を行なっていたんですが、ファーガスの留守の間にフランキーがルート・アイリッシュにおいて戦闘に巻き込まれ死亡。 その親友の死に不信感を持ったファーガスの必死の謎解きが始まります。
これね~、観ていて感じるのは "溢れんばかりの怒り" なんですよね。
それは親友を失ったファーガスを媒体として現した、ケン・ローチ監督の思いが伝わってきましたよ。
イラク戦争中には、約16万人居たとされる民間兵の存在も想像以上で驚き。
そしてもっと驚くのが、民間兵と言えどイラクでの戦闘では何をやってもお咎め無し、と言う法まで成立していた事ですよ。
最近では民間の武装ガードを認める国が多い事実なのは充分承知です。
でも、もうじゅぶん分りきった事ですが、その裏に暗躍する戦争ビジネスの利権が付きまとう事も事実。
ケン・ローチはイラク戦争と言う舞台を使って、その非人道性に "怒り" を持って痛烈に批判しておりました。
またアメリカ軍への批判も同様に。
イラク戦争における本当の犠牲者は、イラクで暮らす国民。
米軍の情け容赦ない態度によって、それまで中立だった人たちがアルカイダのシンパになって行く。
この事実ひとつとっても、イラク戦争に正義などないでしょうよ。
映画のラスト、親友フランキーの死の真相を知ったファーガスの行動に、怒りを通りこした悲しみの訴えが痛いほど伝わってきました。 この結末も、このテーマとして訴えるには致し方ない締めくくりですね。