【フルートベール駅で】 Fruitvale Station アメリカ 2013
製作:フォレスト・ウィテカー 監督・脚本:ライアン・クーグラー
出演:マイケル・B・ジョーダン / メロニー・ディアス / オクタヴィア・スペンサー 他
(サンダンス映画祭:作品賞、観客賞 インディペンデント・スピリット賞:新人作品賞)
2009年の1月1日、カリフォルニア州オークランドの地下鉄フルートベール駅にて、22歳の黒人青年オスカー・グラントが白人警官に撃たれ死亡。映画はこの事実を、大晦日から新年の朝にかけてオスカー・グラントの最期の日を綴った一作。
少し前、ミズーリ州ファーガソンで起こった白人警官による黒人射殺事件による件で、撃った警官を不起訴とする陪審員判決を不服とする暴動が起こりましたよね。 90年代前半には、あのロス暴動を巻き起こしたロドニー・キング事件も鮮明に記憶してます。
フォーガソンの事件同様、このオスカー・グラントの事件も "無抵抗の黒人" を白人警官が撃ったと言うコト。 その場に居合わせた多くの人たちが記録した映像が真相を物語っております。
映画の冒頭、その記録された実際の映像が流れます。(実際の多くの映像はYouTubeでアップロードされていてます。”Fruitvale Station” で検索してみてくださいな)
駅のホームに寄せ集められた黒人グループを手荒く扱う白人警官たち。
非情な銃声が鳴ったあと、オスカー・グラントの物語が始まります。
これねぇ、個人的に今年観賞した映画の中では一番と言えるぐらい胸にぐぐッと来ましたよ。
この映画が白人警官による人種差別的な偏見による社会問題だとか、アメリカの病巣的な問題だとか言うより、本当に悲しい出来事を、冷静な眼で見つめた"温かさ" が感じ取れたんですよ。
オスカー・グラントは前科持ち、出所した今もクスリの売人として生計を立ててます。
しかし、ヒスパニック系の彼女との間に出来た娘タチアナを溺愛。
更正したいけど、世間の厳しさの前に四苦八苦するオスカー。
野良犬を轢き逃げした車を追いかける、母親のバースデーにカードを添える事を喜ぶ。
そんなちょっとした優しさを垣間見せることでオスカーの人と成りに触れます。
この手の映画は充分に衝撃的な事件を、これでもかと訴えるメッセージ的な要素が強いと思われがちですよね。もちろん本作もその訴えは持ち合わせた映画なんですけど、その最期に至るまでの2日間のオスカーの物語はあまりにも人間的でした。
こんな事で22年の生涯を閉じることになったオスカー・グラントという黒人青年が哀しい。
新人監督ライアン・クーグラーにヤラれちゃいましたね、もちオスカーを演じたマイケル・B・ジョーダンの演技にも。
警官が守るべき役目は「市民を守り、市民に仕える」、こういう事件が起こるたびにこの言葉が空しく聞こえ、ある意味絶望的に聞こえさえします。