【汚れた心】 CORACOES SUJOS ブラジル 2011
監督:ヴィセンテ・アモリン 原作:フェルナンド・モライス 出演:伊原剛志/常盤貴子/奥田瑛二/余貴美子/エドゥアルド・モスコヴィス
『善き人』 ('08) の監督ヴィセンテ・アモリンが、太平洋戦争終結時にブラジル日系移民の間で起きた事件 (実話) をベースに撮りあげた一作なんですよね。
当時、ブラジルと日本の間では国交を結んでいなかったので、移民たちには正確な情報が入ってこなかったようなんです。 早く言えば日本についての情報は遮断されてる状態。
戦争での勝利を疑わない移民たちは多数派です。
元日本帝国陸軍大佐ワタナベ (奥田瑛二) をリーダー格とする多数派は、全面降伏して負けたと主張する少数派に対して "國賊" の汚名を浴びせ、写真館店主タカハシ (伊原剛志) にある命を与えます。
まったく、この映画を観るまではブラジル日系移民社会でこんな事が起きていたとは、ショッキングと言う他ありませんでしたよ。
タカハシは妻ミユキ (常盤貴子) と共に仲睦まじく、平和に写真館を営んでる男だったんですが、ワタナベに心酔してるが故にその "命" を受けてしまうんですよ。 それは少数派の粛清です。
ワタナベから手渡された日本刀で、同じ日本人を断罪して殺す。
その勢いはエスカレートして、多数派による虐殺と言っていいぐらいの事件まで発展したそうな。
夫の犯行を知った妻ミユキは苦悩し、かと言って夫タカハシを突き放す事もできない。
常盤貴子がセリフ少なく、当時の日系移民の女性の立場を演じております。
伊原剛志の演じる主人公タカハシも熱演でしたねぇ。
ホントは心優しき男なんですが、帝国軍人の権化のようなワタナベの命令には逆らえきれずにいるのが辛いところでした。 このワタナベを演じた奥田瑛二も、ある意味怪演を見せてくれます。
ですが、やがて敗戦を認めざる得ないところに来て・・・。
日本人がこういう史実を観るのは辛いもんがあります。
当時の日系移民たちも故国を愛する気持ちは誰だって同じだったでしょう。
でもそれが狂信的になればなるほど悲劇を起こすものです。
これは万国共通。 日本人は第二次大戦の敗戦でそれを学んだはずですよね。
この映画では "國賊" と言う言葉が繰り返し出てきます。
先ごろ、わが国の元首相が中国に招かれそこで発言した事がニュースになりましたね。
政権与党の閣僚がその元首相に対して、「國賊」 と言い放った事がありました。
この言葉は容易く使う言葉じゃないのは充分承知です。
その言葉に込められた意味は、とてつもないもんがあるからですよ。
そういう前提でこの映画を観ると、これまた考えさせられる事も大きいと思います。