Quantcast
Channel: CINEmaCITTA'
Viewing all articles
Browse latest Browse all 697

偽りなき者

$
0
0
イメージ 1
【偽りなき者】 JAGTEN デンマーク 2012
 
監督・脚本:トマス・ヴィンターベア 出演:マッツ・ミケルセン / アニカ・ヴィタコブ / トマス・ボー・ラーセン ほか
(2012 カンヌ国際映画祭 男優賞・2012 ヨーロッパ映画賞 脚本賞 受賞)
 
 
 
 
 
 
『光のほうへ』のトマス・ヴィンターベア監督によるヒューマンドラマの一作。
 
幼稚園の教師として勤めるルーカス(マッツ・ミケルセン)は離婚後、ひとり息子のマルクス(ラセ・フォーゲルストラム)にも満足に会えない日々を送っていましたが、仲間らと狩猟などして楽しみながら穏やかに暮らしています。
 
ある日、ルーカスは親友テオ(トマス・ボー・ラーセン)の娘クララ(アニカ・ヴィタコブ)の何気ない嘘によって性的虐待者の烙印を押されてしまいます。
 
ルーカスは次第に追いつめられ、町の連中からも村八分の状態に。
ルーカスに向けられる憎悪と敵意は、やがて息子のマルクスにも及ぶようになっていきます。
 
 
 
 
 
映画の補足情報では、デンマークでは "子供と酔っぱらいは嘘をつかない"との諺があるそうなんですが、まさにこの物語では、それを逆手に取ったドラマでございまして。
 
ルーカスが潔白を証明したくとも、無実を証明するのはクララの証言のみと言う状態。
そのクララがルーカスを追いつめる嘘を言ったワケであるし、もうお手上げですよね。
 
幼稚園の同僚や周りの大人たちはクララの話を疑うことなく鵜呑みにしてしまう。
そのクララの話も細かい詳細など無く、ただ大雑把。
幼い子供に、これ以上証言させるのは可哀想だと言うだけで、否応無くルーカスは犯罪者扱いされてしまうんです。
 
場合は違うけど、どこに国でも起こりえる冤罪の恐怖ですねぇ。
この映画の場合、物語の舞台となる町は小さい社会でして、それだけに人々の保守的な側面も強いワケです。
 
そんな村社会でちょっとした子供の嘘から、事態はひとりの男の人生を狂わせるまでの変化を真摯に描いておりました。
 
カンヌで受賞したマッツ・ミケルセンの演技も素晴らしいものがあります。
穏やかで理性的なルーカスだけに、追いつめられ精神的にも破綻寸前になって行く様を見事に演じてますね。
 
原題の『JAGTEN』とはデンマーク語で "狩り"を意味するものだと思いますが、劇中でデンマークでは伝統的な行事で狩猟が描かれてますが、その意味するところがラストのシーンにも繋がってると思います。
 
憎悪と敵対から生まれる "排除=狩り" 。
ルーカスの行く末を思うと、暗澹たる気持ちになってしまいました。
 
人によってはいろいろ考える事や思うところがたくさんある物語でしょうね、これは。
問題提起と言うか、問題意識な高さがある一作でございました。
 
 
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 697

Trending Articles